夏の恒例行事として多くの企業や団体で行われる「暑気払い」。しかし、いざ幹事や司会を任されると「何から準備すればいいのか」「どんな流れで進めるべきか」「挨拶はどう話せばいいのか」と、不安になる方も多いのではないでしょうか。
暑気払いはただの飲み会ではなく、日ごろの労をねぎらい、コミュニケーションの活性化を目的とした大切な社内イベントです。進行役としてきちんと段取りを整えれば、参加者にとって心地よく記憶に残る時間となります。
この記事では、初めて幹事や司会を担当する方でも安心して進められるように、進行の基本から挨拶例、事前準備、当日の立ち回りまで丁寧に解説します。
暑気払いの幹事になったら押さえておきたい基本
暑気払いの幹事を任されたら、まずはイベントの意味や目的、基本的な流れをしっかり理解しておくことが大切です。準備や進行に役立つポイントを押さえることで、不安なく当日を迎えられるはずです。ここでは、暑気払いとは何か、類似イベントとの違い、そして幹事や司会に求められる役割についてわかりやすく解説します。
そもそも暑気払いとは?開催の意味と目的
暑気払いとは、夏の暑さを和らげることを目的に行われる懇親イベントの一つで、職場やチーム内でのコミュニケーション促進や、日々の疲れをねぎらう場として活用されることが一般的です。季節行事としてのルーツは古く、江戸時代には暑さを避けるための納涼会や水辺の宴などが庶民の間でも親しまれていました。
現在のビジネスシーンにおいては、「上半期の労をねぎらい、下半期への活力をチャージする」という意味合いで行われるケースが多く、夏の飲み会として定着しています。普段あまり接点のない部署間での交流や、職場の雰囲気を和らげる効果もあり、組織全体の結束力アップにもつながる重要なイベントです。
形式は会社によってさまざまで、ホテルや居酒屋を貸し切った食事会から、BBQやビアガーデンなどカジュアルなスタイルまで幅広く開催されています。幹事としては、この目的や雰囲気を踏まえて、適切な進行を意識することが成功の第一歩です。
納涼会や打ち上げと何が違う?
暑気払いとよく似たイベントとして「納涼会」や「打ち上げ」がありますが、目的やタイミングに違いがあります。
暑気払いはその名のとおり、暑さを払うことが目的の行事で、夏の中盤(7月〜8月)に実施されることが一般的です。仕事の成果とは関係なく、季節の節目にあたる社内レクリエーションという意味合いが強くなっています。
一方、納涼会は暑気払いと近い内容ながらも「涼しさを楽しむ会」というニュアンスが強く、浴衣を着てビアガーデンに行くなど、ややイベント色が強いことが特徴です。
また打ち上げは、プロジェクトやイベント、繁忙期の完了を労うために行われるもので、特定の成果やゴールに対しての慰労会となります。つまり、暑気払いは成果の有無に関わらず、組織の士気向上やコミュニケーション活性を目的に行われる点が、他のイベントと大きく異なるポイントです。
どんな立場の人が仕切るべき?幹事や司会の役割
暑気払いの幹事や司会は、役職や年次に関係なく「進行と調整をスムーズに行える人物」が担うのが理想です。一般的には総務や人事、または中堅社員が任されることが多く、参加者との距離感が近い人ほど場の空気をまとめやすいというメリットもあります。
幹事の主な役割は、日程調整・会場手配・招待連絡・参加者のとりまとめ・タイムスケジュール作成など、事前準備全般の運営です。当日は司会進行も担うケースが多く、挨拶のタイミングや余興の流れなども把握しておく必要があります。
また、複数人で幹事チームを組んでおくと、役割分担ができて負担が偏らず、進行も円滑に進めやすくなります。たとえば「司会進行」「受付対応」「写真撮影」「予備対応」などを分けると、それぞれが自分の役割に集中できます。
司会役に選ばれた人は、話し方や立ち居振る舞いにも気を配ると、会場全体の印象がぐっと良くなります。堅すぎず、くだけすぎず、明るく感じの良いトーンで進行することを心がけましょう。
暑気払いの一般的な進行の流れ
暑気払いの成功には、スムーズな進行と時間配分が欠かせません。参加者が楽しめる構成を考えながらも、だらけすぎず、形式ばりすぎず、程よいテンポで進めることが重要です。ここでは、暑気払いの一般的なスケジュール例と、構成ごとのポイントについて紹介します。幹事や司会を担当する方は、全体の流れを把握してから台本づくりに取りかかるとスムーズです。
全体スケジュールの例
暑気払いの進行は、おおよそ2時間前後を目安に構成されるのが一般的です。以下はよくある進行スケジュールの一例です。
進行スケジュールの例
- 18:30 受付開始
- 19:00 開会の挨拶・乾杯
- 19:10 食事・歓談タイム
- 19:40 簡単なゲーム・余興
- 20:10 中締めの挨拶
- 20:15 閉会の挨拶・解散
- 20:30 完全終了(片付け・退出)
最初の30分は受付と着席誘導に充て、開始時刻ちょうどに開会の挨拶と乾杯を行います。食事タイム中はあえて進行を詰めすぎず、会話や交流が自然と生まれる雰囲気づくりを重視しましょう。
中盤に余興や簡単なゲームを挟むと場が盛り上がりやすく、後半に向けての一体感が高まります。余興がある場合は事前の準備と段取りをしっかり整えておくのがポイントです。
終盤は中締めや閉会挨拶で全体をしっかり締めつつ、名残惜しさを残しながらも予定通りに終了させるのが理想です。時間配分に余裕をもたせ、進行に柔軟性を持たせることも成功のカギになります。
開会~閉会までの基本進行
暑気払いの進行は、参加者が気持ちよく楽しめるように、シンプルかつテンポよく組み立てることが重要です。一般的には「開会挨拶」「乾杯」「歓談」「余興またはスピーチ」「中締め」「閉会」の流れで構成されます。
まず開会挨拶では、主催者や役職者から一言もらい、イベントの趣旨や感謝の気持ちを伝えます。続いて乾杯の音頭で場を和ませ、食事や歓談タイムに入ります。この時間はあまり干渉せず、参加者同士の交流が自然に生まれるよう配慮しましょう。
歓談の途中で余興やゲームを入れる場合は、全員が参加しやすい簡単なものがおすすめです。景品があると場がさらに盛り上がります。企業の場合は、上半期の表彰や新人紹介などを挟むと、節目らしさが加わります。
後半は中締めや一本締めで徐々にまとめに入り、最後に幹事から感謝の言葉と今後の予定(例:二次会の案内)を伝えて締めくくります。時間に余裕を持ち、雰囲気を壊さないように柔軟に調整できる進行が理想です。
参加人数・会場タイプ別に調整するポイント
暑気払いの進行は、参加人数や会場のタイプによって最適な構成や段取りが異なります。少人数であればアットホームに、大人数であれば司会進行やマイク設備の準備が重要になります。
たとえば10名ほどの社内開催であれば、形式ばった進行よりも、全員が会話しやすい円卓形式で自然体な交流を重視した進め方が向いています。挨拶も簡潔にして、自由な歓談時間を多めに取りましょう。
一方、50名以上の大人数や、会議室・宴会場・レストランなどの貸切スペースを使用する場合は、司会進行の役割が大きくなります。マイクや音響設備の使用を前提に、タイムラインを明確に組み、プログラムの案内も必要です。余興や表彰などがある場合は、進行スケジュールに無理のない余白を作っておくと安心です。
また、立食形式のビュッフェでは自由度が高いため、全員を一斉に集めるのが難しい場面もあります。要所要所で注意を引くコツ(音響演出やスタッフ誘導)を考えておくと、スムーズな進行につながります。
進行を成功させる!司会者の話し方と挨拶例
司会は、会の雰囲気を左右する大切なポジションです。堅すぎず、くだけすぎず、ほどよいバランスで話すことで、場が和やかに進みます。とくに開会や乾杯などの冒頭の挨拶は、その場にいる全員の注目が集まるタイミング。緊張せずに話せるよう、あらかじめフレーズや台本を準備しておくと安心です。ここではそのまま使える例文もご紹介します。
開会の挨拶・乾杯の音頭の例文
開会と乾杯は、暑気払いのスタートを切る重要なパートです。全体にメリハリをつける意味でも、短く明るいトーンを意識しましょう。
開会挨拶の例文
皆さま、本日はご多忙のなか、暑気払いにご参加いただきありがとうございます。
連日の暑さの中、日々の業務を支えてくださっている皆さまに感謝を込めて、本日はささやかながら楽しい時間をご用意しました。
どうぞおいしい料理とお飲み物を楽しみながら、リラックスしたひとときをお過ごしください。それでは、ただいまより暑気払いを開会いたします!
乾杯の音頭の例文
それでは、皆さまグラスのご用意をお願いいたします。暑さに負けず、この夏も元気に乗り越えていけるよう、そして皆さまの健康とさらなるご活躍を願って、乾杯!
どちらも1〜2分程度に収まるボリュームで、場の雰囲気に合わせて調整するのがポイントです。無理にウケを狙う必要はありません。丁寧で前向きな言葉を選ぶだけで、十分に好印象を与えることができます。
中締め・閉会の言葉の例文
会の終盤にあたる「中締め」や「閉会の挨拶」は、全体を締めくくる大切な場面です。余韻を大切にしながらも、簡潔で聞きやすい言葉選びを意識しましょう。以下に使いやすい例文を紹介します。
中締めの挨拶の例文
皆さま、本日は暑気払いにご参加いただきありがとうございました。おかげさまで大変盛り上がり、良い時間となりました。
このあとは二次会や自由参加の方もいらっしゃるかと思いますが、まずは一区切りということで、ここで中締めとさせていただきます。一本締めのご発声を〇〇さん、お願いいたします。
閉会の挨拶の例文
そろそろお時間となりましたので、ここで本日の会をお開きとさせていただきます。連日の暑さのなか、こうして皆さんと楽しい時間を過ごせたことに感謝申し上げます。
引き続き体調に気をつけつつ、業務のほうでも一丸となって頑張っていきましょう。本日は誠にありがとうございました!
状況によっては「お忘れ物のないように」などの案内も添えると親切です。言葉に想いを込めることが、印象的な締めにつながります。
場を和ませる雑談ネタ・導入フレーズ
司会の冒頭や余興の間などに使える「ちょっとした雑談ネタ」や「場を和ませる導入フレーズ」があると、進行がスムーズになります。緊張した空気を和らげたいときにも役立ちます。
使いやすい導入フレーズの例文
- 「今日は本当に暑いですね。皆さん、溶けてませんか?」
- 「実は今日、社内で一番日焼けしてる人を探してたんですが…たぶん〇〇さんです(笑)」
- 「このあと料理も続々と出てきますので、飲みすぎる前にしっかり召し上がってくださいね」
雑談ネタの例文
- 夏のおすすめアイスや冷やしグルメ
- 最近あった“ちょっと笑える失敗談”
- 職場で起きたほっこりエピソード(個人攻撃にならない話)
あくまで空気をゆるめることが目的なので、ウケ狙いよりも「ほっとする話題」を選びましょう。あらかじめ2〜3パターン用意しておけば、咄嗟の場面でも安心して使えます。
当日までに準備しておくべきこと
暑気払いを円滑に進めるためには、当日を迎える前の準備がすべてといっても過言ではありません。特に司会や幹事を任された場合は、事前の段取り・流れ・伝える言葉まで整理しておくことで、自信を持って進行できます。この章では、当日の進行に欠かせない台本の作り方や、社内外への配慮、あると便利な持ち物まで、実用的な準備リストをご紹介します。
台本(司会進行表)の作り方とテンプレ
進行台本(司会進行表)は、イベントをスムーズに進めるための“設計図”のような存在です。当日の流れを頭の中だけで覚えておくのは難しいため、紙やスマホにまとめたものを手元に置いておくと安心です。
基本構成のテンプレート
- 受付開始(18:30〜)
- 開会挨拶(19:00〜 〇〇部長)
- 乾杯の音頭(19:05〜 〇〇課長)
- 歓談・食事タイム(19:10〜)
- 余興・ゲーム(19:40〜)
- 中締め挨拶(20:10〜 〇〇部長)
- 閉会の言葉・終了案内(20:15〜 幹事)
それぞれの項目に「誰が担当するのか」「何分程度かかるか」「使用するマイクや映像の有無」などを明記しておくと、他のスタッフとも連携しやすくなります。
また、万が一予定が押したり巻いたりした場合に備えて、10分程度の調整枠を設定しておくと柔軟に対応できます。余裕を持った構成と、見やすいレイアウトで作ることが成功のカギです。
社内・社外向けの配慮ポイント
暑気払いは、社内のメンバー同士で行う場合もあれば、取引先や関係会社を招くケースもあります。そのため、参加者の属性に応じた配慮が求められます。とくに社外の方がいる場合は、社内ノリを押し付けすぎないことが大切です。
たとえば社内イベントであれば、多少フランクな進行や軽い冗談も場を和ませる効果がありますが、社外参加者がいる場合は、敬語や丁寧語を基本とし、司会進行もビジネスマナーを意識して行いましょう。
挨拶や乾杯の依頼は、役職の高い方から順にお願いするのが基本です。また、案内メールや招待文に服装の目安や会場情報(アクセス・エレベーター位置など)を事前に伝えておくと、来場者への配慮になります。
社外の方が複数参加する場合は、会の最初に「本日はお忙しい中ご出席いただきありがとうございます」といった挨拶を必ず入れると、組織としての印象も良くなります。
相手の立場に立って居心地の良い空間を演出できることが、成功する幹事の資質です。
備えておくと安心な持ち物・小道具リスト
当日は何が起こるかわかりません。進行をスムーズに行うために、事前に“あると便利な持ち物”を揃えておくと、慌てることなく対応できます。
幹事・司会の持ち物チェックリスト
- 司会進行表(紙・スマホ両方)
- タイムスケジュール用の腕時計やタイマー
- マイクやスピーカーの予備バッテリー
- 筆記用具、メモ帳
- 参加者リストと連絡先控え
- 予備の名札や席次表
- マスクや除菌シート(衛生対策)
- 景品や余興用の小道具・抽選グッズ
- 延長コードやスマホ充電器
- 当日渡す資料や配布物
とくに余興や景品抽選を予定している場合、忘れがちなのが「くじ引き箱」「番号札」「メガホン」などの演出小物。ちょっとしたグッズがあるだけで、演出にメリハリが出ます。
また、当日急に欠席者が出たときのために、進行の代案や挨拶担当のサブ案も用意しておくと安心です。「備えあれば憂いなし」の姿勢で、トラブルを未然に防ぎましょう。
まとめ|準備と進行で「暑さも疲れも吹き飛ばす」会に
暑気払いは、ただの飲み会ではなく、日頃の疲れを癒やし、チームの一体感を高める大切な社内イベントです。幹事や司会としての丁寧な準備と、当日の柔軟な進行があってこそ、参加者にとって「また参加したい」と思える時間になります。
開会から閉会まで、段取りがしっかりしていれば安心して盛り上がりに集中できますし、ちょっとした気配りやユーモアが、場の空気を明るくするスパイスにもなります。会場や人数に応じて調整しつつ、全員が気持ちよく参加できる工夫を心がけましょう。
万全の準備と、笑顔の対応があれば、暑さも疲れも吹き飛ぶような時間を演出することができます。幹事という役割を、ぜひ前向きに楽しんでください。